診療科・部門ご案内

手・肘の外科疾患

整形外科における上肢・手外科部門の特色

当施設は2019年11月より日本手外科学会認定基幹研修施設であり、2018年は151件、2019年は174件の上肢・手外科関連の手術を行いました。骨折をはじめとする外傷、絞扼性末梢神経障害、炎症性疾患、母指CM関節症などの変形性関節症に対処できる態勢を整えています。

  • 外傷:腱損傷、神経損傷、手指節間関節、手関節、肘関節の靱帯損傷や脱臼骨折、三角線維軟骨損傷(TFCC損傷)など
  • 絞扼性末梢神経障害:手根管症候群、肘部管症候群など
  • 炎症性疾患:ドケルバン病、弾発指、上腕骨外側上顆炎など
  • 変形性関節症:母指CM関節症、ヘバーデン、ブシャール結節など
  • 腫瘍:ガングリオン、腱鞘内巨細胞腫など
  • 関節の拘縮
  • デュピュイトラン拘縮
  • 無腐性壊死:キーンベック病など
  • 関節リウマチによる手の変形など

各領域における代表的疾患をご紹介します。

 

外傷:橈骨遠位端骨折


手首の周辺の痛み、腫れ、変形が生じ、手首を動かすと痛みが生じます。転倒、転落により手首を強く地面と着くことで受傷します。骨粗鬆症が有る場合、立っている高さからの転倒でも生じることがあります。


手首に過剰な圧力がかかることで生じ、手首、前腕の受傷時の姿勢と骨の強度により骨折型が決定されます。子供では力学的強度の低い成長軟骨部での骨折が見られることもあります。


レントゲン検査やCT検査で行い、骨折型やずれの大きさを評価します。治療方法を骨折型やずれの大きさによってお勧めします。
保存治療の場合、局所麻酔をしてから徒手整復を行い、ギプスもしくはギプスシーネで上肢(手首、肘)を固定します。固定期間は通常4-6週間です。固定期間中に骨折部にずれが生じた場合、手術治療が必要となることがあります。
手術治療の場合、全身麻酔もしくは伝達麻酔(神経ブロック麻酔)をしてから鋼線を刺入して骨折部を固定(ピンニング固定)し、ギプス固定を行う方法や骨折部をまたぐように手と橈骨の手前の骨にスクリューを挿入して固定器を装着する創外固定法、手首の掌側に縦に創(4cm程度)をつくって骨折部を直接整復しプレートで固定する方法があります。それぞれの方法においてそれを選択する理由があります。成人の方の場合、一般的にプレートで固定し簡易的な前腕部の固定を2週間行ったあと、手首を早期から動かしていく方法がよく選択されています。また関節面が粉砕するような骨折型の場合、偽関節や将来の変形性関節症を予防するため正確な整復固定が必要です。これに対して当院では手の甲に小さな創(5mm程度を数か所)を作成し、関節鏡を挿入し、鏡視下に正確な整復固定を行っています。

▼手関節CT 掌側から
▼手関節CT 末梢側から
※ 関節内にも骨折線を認めています。
▼関節鏡でみた転位した関節内骨折
▼整復された後の関節内骨折
▼術後手関節レントゲン ▼術後2か月後の手の写真
 

絞扼性末梢神経障害:手根管症候群


母指、示指、中指、環指の母指側半分、手掌部にしびれを自覚します。しびれの出現する時間帯は様々で、作業中や夜間に自覚することや、常にしびれていることもあります。神経障害が進行するとつまむ動作に必要な母指手掌部の筋肉(母指球筋)が萎縮します。
妊娠後や重労働者や手首の骨折の変形治癒後に見られます。糖尿病患者さん、透析をしている方にも見られることがありますが、多くの場合、更年期の女性にみられ、その原因は不明です(特発性)が、女性ホルモンが関係している可能性もあると言われています。


手首の掌側の手根管という管腔構造の中を、指を曲げる屈筋腱と正中神経が通っています。様々な原因で生じる腱鞘滑膜炎による腱、腱鞘の肥厚や骨の変形などにより手根管が狭くなることで正中神経が圧迫を受け、障害されます。神経の機能が低下すると手の自覚的なしびれ(安静時や夜間時)、感覚障害(触っている感じ、冷感、温感がわかりにくい、または逆に過敏に感じるなど)、運動障害(正中神経が支配している筋の萎縮)が生じます。特に重症になると親指の腹とその他の指の腹を合わせるつまみ動作(対立動作)が困難になります。


当院では手根管症候群や肘部管症候群など神経障害性疾患を疑った場合、神経伝導速度検査を行い、診断、重症度を評価しています。この検査は皮膚の表面に電極を貼り、電気を神経に流す(少しびりびりします。)ことで神経の伝導速度や筋の萎縮の程度がわかります。


軽症の場合、ビタミンB12の内服、ステロイド剤の手根管内注射(数か月に一度程度)、手首の装具治療(特に夜間時痛の方に有効なことが多いです)をお勧めします。これらの保存治療に抵抗する場合や筋の萎縮が強い場合は手術治療をお勧めします。手術方法は手根管の屋根に当たる横手根靱帯を切離する方法を基本としています(手根管開放術)。その手術は比較的短時間(20分程度)で、日帰りで行っています。手関節の掌側に縦に数センチ切開し、靱帯を切離し、圧迫を解除します。手術後の固定は不要です。自覚的なしびれは数日~数週間で改善することが多いです。つまみにくさや触っている感じのわかりにくさの改善には神経軸索の再生が必要となるので、数か月程度かかり、症状が残存することもあります。そのため重症な手根管症候群では手根管開放術のみでは十分に筋力が回復しないため対立動作ができるようにならないことが予想されます。そこで手根管開放術に加えて腱移行などの手術を同時に追加することがあります(対立再建術)。この方法を行った場合3~4週間の副子固定が必要となります。

 

炎症性疾患:弾発指


指を動かしにくい、曲げた後、伸ばす時にひっかかるようなバネ現象が見られます。進行すると指は曲がったまま伸びなくなることがあります。母指に多く発生し、次いで中指、環指に発生します。手根管症候群と同様、妊娠後、更年期の女性、重労働者の方に見られます。糖尿病患者さん、透析をしている方にも見られることがあります。


指を曲げる屈筋腱は腱鞘というトンネルのような筒の中を通り、骨の近くを滑走できるようになっています。そのため特に指の付け根の掌側で擦れやすく、炎症が生じます。その結果、腱鞘の内腔が狭くなり、腱が肥厚することで、腱の通過障害が生じることが症状の原因です。通過障害が生じる原因は未だ不明ですが、手根管症候群と同様に女性ホルモンが関係している可能性があります。


診察を受けて頂き、問診、触診、超音波検査を行うことで診断がつきます。


腱鞘内へのステロイド注射が有効なことが多いです。腱に負担をかけるので、注射の間隔は通常5-6か月程度空けます。痛みはとれることが多いです。糖尿病患者さんは腱が肥厚していることが多く注射の効果は下がります。
注射治療でも痛みやバネ現象が残存する場合、手術治療をお勧めします。手術は日帰りで行っています。指の付け根の掌側に1-2センチ切開し腱鞘を切離もしくは切除します。手術後の固定は必要ありません。

 

変形性関節症:母指CM関節症


母指CM関節は大菱形骨と母指中手骨がつくる鞍状関節で、多方向への広い可動域を有する母指運動の鍵となる関節です。この関節にはつまみや握り動作で力が集中するため靱帯のゆるみや、関節軟骨の摩耗が生じやすいと考えられています。


ものをつまむ時や瓶やペットボトルのふたを開ける時に痛みがあります。進行するとCM関節が背側(指の甲側)に亜脱臼し母指の外転(母指を開くこと)が制限され、MP関節(CM関節の一つ末梢の関節)過伸展、IP関節(最も先端の関節)屈曲位の母指スワンネック変形(ダックネック変形)が生じます。

▼つまみ動作時の母指の付け根の痛み ▼レントゲン
(関節の間が消失しており、
背側に亜脱臼しています)


保存治療としてCM関節固定装具治療、ステロイド剤のCM関節内注射を行います。痛みがとれない場合、手術治療をお勧めします。手術方法はCM関節固定術、関節形成術、中手骨外転対立位骨切り術があります。どの方法においても除痛に関して有効な方法です。
CM関節固定術はピンチ力(つまむ力)が最も期待できます。一方、動きに制限が生じます。
関節形成術は大菱形骨を切除し、CM関節周辺に停止している腱を半分裂き、腱球として大菱形骨のあった部位に充填します。固定術と比べてピンチ力は出ませんが、動きに制限が生じにくいです。
中手骨外転対立位骨切り術は中手骨をつまみやすい位置になるよう骨切りを行います。関節温存が可能でピンチ力も期待できます。一方、重症な母指CM関節症には適応がありません。

▼中手骨外転対立位骨切り術
▼手術前
▼手術後

中手骨を背側方向に骨切りし、CM関節掌側の荷重を背側に分散させることで痛みが少なくなることが期待できます。手術後2週間程度の外固定が必要です(手術前後のレントゲン)

▼手術から2年後の手の写真とレントゲン

 

腫瘍:ガングリオン


手首の甲、手首の内側、手掌部などにグリグリとした膨らみができます。出現時痛みが生じますが、改善します。手首の甲にできると神経を圧迫することがあり、手をつくときに痛みがあります。


手に発生する腫瘍の中で最も多く、若年成人に多く、約3:1の割合で女性に多いです。関節の靱帯や腱鞘の粘液変性が誘因となって発生すると考えられています。


痛みがなく、整容的にも問題ない場合、放置しておいても構いません。穿刺、吸引することもありますが、再発率が高いです。再発を繰り返す場合、手術治療をお勧めします。基本的に日帰り手術が可能です。

 

無腐性壊死:キーンベック病


動作時に手首に痛みが生じます。進行すると安静時痛や、手首に可動域制限が生じます。


不明ですが、血行障害や繰り返しの動作による微小骨折、尺骨マイナス変異(尺骨が橈骨に比べて短いために月状骨に圧力がかかる。)が考えられています。


レントゲン検査、MRI検査を行います。


病期分類によって治療方法は異なります。月状骨の形状、関節面が保たれている場合は、その温存するための方法を計画します。月状骨が扁平化し周囲関節にも変形が生じている場合は部分関節固定などを行い、除痛を図ります。
温存する方法として橈骨短縮骨切り術、有頭骨部分短縮骨切り術を行っています。尺骨マイナス変異がある場合は橈骨短縮骨切り術を、その状態でなければ有橈骨部分短縮骨切り術を行います。