胃がんについて
胃がん治療では、現時点で最も妥当と考えられる標準的な治療法を推奨する治療ガイドライン(胃がん治療ガイドライン)に基づいて治療を行っています。
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当院では、これらのガイドラインのなかで、特に当院で手術を受けていただくにあたって、重要と思われることがらを中心に編集した冊子を作成しています。この冊子を用いて外来初診時より説明し、患者さんに治療について十分理解をしていただけるように努めています。
この説明用冊子(スマイルライフ)には、
① 胃がんの病期と治療法について
② 入院中の術前・術後の経過と処置について
③ 手術の合併症と術後の後遺症について
④ 胃のしくみについて
⑤ ダンピング症候群
⑥ 実施の食事の取り方
⑦ 食生活について
⑧ 胃切除術後に適した料理
⑨ 消化の良い食品・しにくい食品
⑩ 日常生活について
など、入院治療に関わることがらについて、できるだけわかりやすく解説しています。
また、入院中の経過・治療においては、日々の治療内容や看護内容を日ごとに記載したクリニカルパスをもちいて進めており、患者さんにわかりやすく安全で優しい治療の提供を心がけています。
さらに当院上部消化管グループの取り組みとして
① 術後回復力強化を意識した治療
(1)経口補水液による術前脱水の予防と手術直前までの炭水化物投与
(2)手術では必要のないドレーン(腹部の術後排液用チューブ)は入れない。
・・・・・十分な疼痛管理と共に早期離床を促す。
(3)術後絶食期間の短縮と術後点滴の早期終了
(4)積極的な低侵襲手術の導入(腹腔鏡下手術)
② 退院後も安心して通院していただくための地域連携の強化
(1)術後連携パスを用いた“かかりつけ医との地域連携
③ 積極的な臨床試験への参加
があります。
① 腹腔鏡補助下手術
高度に進行していない患者さんに対してはより侵襲の少ない腹腔鏡補助下胃切除術を実施しています。
この腹腔鏡下手術は
① おなかの傷が小さく体への負担が小さい。
② カメラによる拡大視が可能で、肉眼では見えないものが確認できる。
③ 術後の創部の痛みが少なく、早期より離床が可能。
④ 早期退院が可能。
などのメリットがありますが、一方では
① 患部を触って確認できない。
② 手術中おなかの中全体が確認できない。
③ 手術時間がかかる。
などのデメリットもあります。
② 術前の脱水予防と早期の傾向摂取の開始
胃がん手術においては、従来は前日夕より絶飲食で点滴を行い、手術場にはベッドの入室、術後はガスがでるまで絶食で管理していました。
現在では、手術のときの全身麻酔では、麻酔数時間前までの飲水は問題ないといわれており、当院でも手術3時間前までの飲水を許可し、点滴は行わずに手術場には歩いて入室していただいています。
また、術後も消化管の吻合手技も安定しているため、縫合不全(縫ったところがほころびる)の合併症はきわめてまれとなっています。また、早期の飲水は、術後の腸の動きを活発化するといわれており、さらに飲水により口渇感の改善と術後の点滴の早期終了を可能にします。当院ではこれらの利点に着目し、手術前日からの積極的な経口補液と術後翌日からの経口補液を取り入れています。
これにより、患者さんの術後のQOL改善が得られることを期待しています
③ かかりつけ医との地域連携
当院のような地域がん拠点病院では、継続的で質の高い医療を患者さんに提供できるように、かかりつけ医と連携のもと、術後の治療・経過観察を行うことが求められています。
この地域医療連携は、当院で手術を受けられ、術後の経過観察や経口抗癌剤による化学療法を受けられる患者さんが対象となります。手術を終えて一段落した患者さんの術後の状態を当院に定期的に通院していただきながら、かかりつけ医の先生にも診察、検査、投薬などをお願いして、手術後の状況をきめ細かく見ていただくことになります。
この連携診療をスムーズの行うために、当院では「スマイルライフ-地域連携パス-」というこの冊子を活用しています。これは当院主治医とかかりつけ医が協力して手術後5年までの診察・検査を計画的に実施していくための冊子で、これを基に当院での手術の結果や治療経過、また、かかりつけ医での診察・検査結果などの患者さんの情報を共有していきます。
④ 臨床試験について
当院は、関西や日本における食道がん・胃がんを専門とする病院により構成される組織で行われている臨床試験などにも積極的に参加しており、より新しい治療の科学的根拠を発信できるように努めています。
新しい有望な治療法(臨床試験)の対象となる患者さんには十分説明し、その治療法への参加・不参加がご理解の上で決定できるように心がけています。