八尾市立病院

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診療科紹介

循環器内科

スタッフ

補職名等 医師名 専門分野 学会認定など
医療顧問

星田 四朗 循環器疾患、虚血性心疾患、
高血圧、心不全、
心筋症、不整脈
日本内科学会 認定医
日本内科学会 総合内科専門医
日本循環器学会 循環器専門医
日本医師会 認定産業医
臨床研修指導医
八尾市医師会 理事
副院長
兼 循環器内科部長
兼 救急センター長
兼 卒後教育センター長
渡部 徹也 不整脈
虚血性心疾患
心不全
日本内科学会 認定医
日本内科学会 総合内科専門医
日本循環器学会 循環器専門医
日本超音波医学会 専門医・指導医
日本心血管インターベンション治療学会
専門医・指導医
日本不整脈心電学会 不整脈専門医
循環器内科部長 益永 信隆 虚血性心疾患
不整脈
心臓リハビリテーション
循環器予防医学
心不全
日本内科学会 認定医
日本内科学会 総合内科専門医
日本循環器学会 循環器専門医
日本心血管インターベンション治療学会
認定医
日本心臓リハビリテーション学会 指導士
日本医師会 認定産業医
臨床研修指導医
日本不整脈心電学会 不整脈専門医
MEセンター部長
兼 循環器内科医長
篠田 幸紀 虚血性心疾患、心不全 日本内科学会 認定医
日本内科学会 総合内科専門医
日本循環器学会 循環器専門医
日本心血管インターベンション治療学会
認定医
臨床研修指導医
日本不整脈心電学会 不整脈専門医
循環器内科医長 南坂 朋子 心不全
不整脈
心臓リハビリテーション
日本内科学会 認定医
日本内科学会 総合内科専門医
日本循環器学会 循環器専門医
日本不整脈心電学会 不整脈専門医
循環器内科医長 乾 礼興 虚血性心疾患、不整脈 日本内科学会 認定医
日本内科学会 総合内科専門医
日本循環器学会 循環器専門医
日本心血管インターベンション治療学会
専門医
臨床研修指導医
日本不整脈心電学会 不整脈専門医
ICD/CRT 研修終了
循環器内科医長 網屋 亮平 循環器内科全般、
特に不整脈
日本内科学会 認定医
日本内科学会 総合内科専門医
日本循環器学会 循環器専門医
循環器内科医師 藤原 柾斗 循環器一般
循環器内科医師 村上 阿理紗

 

ご紹介

当院は、日本循環器学会指定循環器研修施設であります。

新病院になり小児救急だけでなく、循環器系の救急医療にも重点をおいています。
このため従来の内科循環器部門が循環器内科として独立する事となりました。

スタッフは、星田医療顧問、渡部副院長、益永部長、篠田部長、南坂医長、乾医長、網屋医長、藤原医師、村上医師の9名で毎日の循環器外来と24時間体制の救急業務を担当しています。

狭心症、心筋梗塞、心不全、不整脈等循環器疾患一般に対しては、全て対応可能で、ペースメーカー植え込み、カテーテル検査、経皮的冠動脈形成術等の処置に関しても24時間体制を敷いております。又、新たにMEセンターが新設され、長山臨床工学士が循環器領域内のME機器の管理、整備を行い効率の良い機器使用に貢献しています。
血管造影撮影(アンギオグラフィー)装置
血管造影撮影(アンギオグラフィー)装置

循環器内科が担当する疾患と治療について

はじめに

循環器内科医が診療する疾患は多岐にわたっています。例えば高血圧症のような生活習慣病もその一つである一方、急性心筋梗塞や心室頻拍など突然死の原因になるような疾患もあります。また、人口の高齢化に伴い心不全や心房細動などの患者さんは今後増加していくと考えられます。

循環器疾患として、具体的には下記のような病気があります。
冠動脈疾患:急性心筋梗塞、不安定狭心症、安定型狭心症、冠攣縮性狭心症 など
不整脈疾患:心房細動、発作性上室性頻拍、洞不全症候群、房室ブロック など
心臓弁膜症:大動脈弁狭窄症、僧帽弁閉鎖不全症 など
心筋症:拡張型心筋症、肥大型心筋症 など
その他:下肢閉塞性動脈硬化症、肺動脈血栓塞栓症 など

また、本邦における慢性心不全患者は約120万人とされていますが、高齢化に伴い2030年には約130万人まで増加すると推測されています(出典:公益財団法人 日本心臓財団ホームページ 超高齢社会で急増する心不全)。上記の疾患は直接的あるいは間接的に心機能低下に影響するため早期の診断・治療が重要となってきます。

当科の紹介

当院の循環器内科医は9名で外来、救急、入院を担当しています。日本循環器学会専門医7名、日本心血管インターベンション学会認定医2名/専門医2名、日本不整脈心電学会不整脈専門医5名、日本超音波医学会指導医1名、日本心臓リハビリテーション学会指導士1名が常勤で勤務しており、様々な循環器疾患に準備しています。
具体的には、狭心症や心筋梗塞などに対する冠動脈インターベンション、不整脈に対するカテーテルアブレーション、下肢閉塞性動脈硬化症などに対する末梢動脈の血管内治療に積極的に取り組んでいます。また、入院患者さんに対する心臓リハビリテーションも積極的に行っています。近隣の医療機関の先生方と連携し循環器内科医師直通の循環器ホットラインも運用中で、急を要する場合、かかりつけの先生方から当院の循環器内科医に直接相談して頂くことが可能です。

循環器内科の入院患者さんは、重症度に応じ一般病棟約30床、ICU6床(CCU2床) 、HCU8床のいずれかに入院されます。

入院して行う検査・治療

カテーテル検査および治療(冠動脈造影検査、カテーテルアブレーション、経皮的冠動脈インターベンション、末梢動脈血管内治療、 永久ペースメーカ植込み術、下大静脈フィルター挿入術、ループレコーダ植込み術 右心カテーテル検査、心筋生検)を行っています。心不全患者さんに対する治療(内服・点滴・体外循環)、心肺運動負荷試験(CPX)を行っています。

主に外来で行う検査

ホルター心電図、携帯型心電計、経胸壁心エコー図、経食道心エコー図、トレッドミル運動負荷検査、心臓核医学検査、心臓CT検査、心臓MRI検査、CPXなどの検査を施行しています。

冠疾患治療について

当院では、安定した狭心症に対する治療はもちろんのこと、緊急治療を要する急性心筋梗塞やそれに伴う致死性の合併症を適切にマネージメントできるよう、24時間365日体制で治療にあたっています。

当院の特色

当院では循環器専門医7名、心血管インターベンション専門医2名・認定医2名を含むスタッフ7名、レジデント2名で治療にあたっています。
冠疾患の診断として、当院では外来で可能な負荷心電図、冠動脈CT(320列)、負荷心臓核医学検査、心臓MRI(3テスラ)などを行っています。冠動脈造影検査(カテーテル検査)では、狭窄を認めても基本的には冠血流予備量比(FFR)検査などを行い、本当に治療が必要な病変にのみカテーテル治療を行っています。
冠動脈インターベンション(カテーテルによる血管内治療)では、従来治療が困難であった高度石灰化病変に対する治療として、2020年より順次下記のデバイスを導入し、現在ほぼすべての冠動脈疾患に対するインターベンション治療が可能となっております。

ロータブレーター

ダイアモンドチップが散りばめられた、高速回転するドリルによって、前方の石灰化病変を削る治療です。削られた石灰化病変は赤血球よりも小さくなり、毛細血管をくぐりぬけて、最終的には脾臓で処理されます。これにより、その後バルーンやステントで治療可能となります。

ロータブレーター

ダイアモンドバック

ロータブレーターと同じくダイヤモンドチップのドリルですが、重心がカテーテルの中心より外側に偏位しており、高速回転の遠心力で側面の石灰化を削り取ります。ロータブレーターとは病変により使い分けます。

ダイアモンドバック

ショックウェーブ

もともと腎・尿管結石に使用されていた体外衝撃波治療を応用し、血管内でカテーテルを通じて衝撃波を発生することにより、石灰化を破砕してステントが十分拡張することが出来るようになります。治療に伴う合併症が極めて少ないという特徴があります。

ショックウェーブ

Kereiakes DJ, et al. Principles of Intravascular Lithotripsy for Calcific Plaque Modification. JACC Cardiovasc Interv. 2021;14:1275–1292.より引用

また、ステント留置が困難な方などに対するDCA治療、薬剤溶出バルン(DCB)による治療も積極的に行っています。

DCA(方向性冠動脈粥腫切除術)

冠動脈のプラークを切除し、体外に取り出します。プラーク量が減ることで狭窄が解除され、場合によってはステントを留置せずに治療を終えることもできます。

DCA(方向性冠動脈粥腫切除術)
DCA(方向性冠動脈粥腫切除術)

以下は当院で施行したDCAの症例です。赤矢印の部分に狭窄がありましたが、DCAで削り取ることで、ステントを留置することなく治療を終えました。術後数年経過しますが、再狭窄なく病状は安定しております。

症例紹介

症例紹介

症例患者様:60歳代 男性
症例治療内容:DCA(方向性冠動脈粥腫切除術)にてプラーク切除後に薬剤溶出性バルーンで拡張し良好に開大した。
症例治療回数:1回
※ 各循環器手術について(補足説明)

不整脈部門

当院は不整脈専門医研修施設で、2024年4月現在、不整脈専門医が5名と多く在籍しており、頻脈性不整脈と徐脈性不整脈それぞれに対して、患者さんの予後改善やQOL改善を目指して、若年者から高齢者まで積極的な治療を行っています。

頻脈性不整脈

 心房細動、心房粗動、発作性上室頻拍をはじめとした頻脈性不整脈に対して、洞調律維持を目指して、カテーテルアブレーションを中心とした治療を行っています。3次元マッピングシステムとして、CARTO®3およびEnSite™を用いて、放射線被ばくの低減や難治性不整脈に対する治療成功率の上昇を図っています。

症例紹介

CARTO®3での左房のVoltage Map
(左心房を後方から見た像)

▼ 肺静脈隔離術前 ▼ 肺静脈隔離術後
肺静脈隔離術前 肺静脈隔離術後

症例患者様:70代 男性
症例治療内容:持続性心房細動に対して両側肺静脈隔離術
症例治療期間・回数:入院期間:3泊4日、手術時間:1時間30分、入退室2時間、初回症例
※ 各循環器手術について(補足説明)

 高周波アブレーションという高周波電流を通電して焼灼する方法以外に、心房細動の初回症例や発作性上室頻拍の一部(房室結節リエントリー性頻拍)に対する治療として、冷凍アブレーション(クライオアブレーション)を積極的に取り入れ、より安全な治療を心がけています。

▼ 冷凍アブレーション ▼ 高周波アブレーション
肺静脈隔離術前 肺静脈隔離術後

Cryoballoon or Radiofrequency Ablation for Paroxysmal Atrial Fibrillation.
N Engl J Med. 2016;374(23):2235-45. より引用

 なお、当院の心房細動に対するカテーテルアブレーションは、鎮静薬・鎮痛薬・筋弛緩薬等を用いた全身麻酔下で行うことを原則としております。全身麻酔下で行うことにより、患者さんへの苦痛を緩和し安全に治療を受けていただくことが可能です。

徐脈性不整脈

▼ ペースメーカ植え込み後の画像
ペースメーカ植え込み後の画像

 洞不全症候群や房室ブロックという、脈が遅くなる疾患に対して、ペースメーカ植え込みを行っています。局所麻酔下に約1〜2時間程度の手術を行い、約1週間程度の入院での経過観察をおこなっています。

症例紹介
症例患者様:80代 女性
症例治療内容:完全房室ブロックに対して、恒久的ペースメーカー植込み
症例治療期間等:入院期間:7日間、手術時間:1時間20分、入退室:2時間、初回症例
※ 各循環器手術について(補足説明)

▼ リードレスペースメーカ植え込みの概略図
リードレスペースメーカ植え込みの概略図
A Leadless Intracardiac Transcatheter Pacing System.
N Engl J Med. 2016;374(6):533-41. より引用

 さらに、2024年度からは当院もリードレスペースメーカ植え込みの施設認定を受けました。従来のペースメーカ植え込みと比較して、手術時間が短縮され、創部も鼠径部の小さな傷のみとなるため感染症のリスクが低減されます。全ての方が適応となるわけではありませんが、適応となる症例に対しては、積極的に植え込みを行っていく予定です。

 また、原因不明の失神の患者さんや、原因不明の脳梗塞の患者さんに対しては、ホルター心電図等でも原因が不明な場合は、植え込み型心電計の植え込みをおこない、原因の究明に努めています。
 上記の植え込み型心臓デバイスのフォローアップに関しては、木曜日午後のペースメーカ専門外来に加えて、遠隔モニタリングシステムを用いることで、患者さんの自宅からも、植え込みデバイスの情報を確認しています。

末梢血管治療部門

当院では上肢/下肢動脈、鎖骨下動脈、腎動脈、腸間膜動脈、腹部大動脈の一部、および深部静脈血栓症と、大部分の血管に対して治療を行っています。末梢血管へのカテーテル治療は毎年約150件程度施行しています。特に包括的高度慢性下肢虚血(CLTI)と呼ばれる重症の状態に対しては血管内治療だけでなく形成外科をはじめ多職種と協力して対応しています。透析患者さんのシャントPTAは日帰り手術で行うことで早く日常生活に戻っていただける工夫をしています。また深部静脈血栓症については保存的治療と侵襲的治療を組み合わせながら早期の改善を目指した治療を行っています。

下肢閉塞性動脈硬化症とは

糖尿病、高血圧、脂質異常症といった生活習慣病は全身の動脈硬化を促進して脳梗塞や心筋梗塞発症の危険性を高めます。足に向かう動脈が動脈硬化を起こして血流不足となった結果、さまざまな症状を引き起こす病気が下肢閉塞性動脈硬化症です。末梢動脈疾患は以前ASO(arteriosclerosis obliterans)と呼ばれていましたが、近年ではPAD(peripheral arterial disease)と呼ばれます。またその大部分を占める下肢閉塞性動脈硬化症はLEAD(lower extremity artery disease)と表記されます。生活習慣や高齢化の進行に伴いLEADに対する治療は日本で増加傾向にあります(図1)。

J-EVT 登録症例数の変遷
図1:日本心血管インターベンション学会
J-EVT年次報告より引用

下肢閉塞性動脈硬化症を発症した方の約3割は冠動脈疾患や脳動脈疾患を合併しているといわれており注意が必要です。一般的には1.無症状⇒2.歩いたときに足が痛くなる、一度に歩ける距離が短くなる⇒3.じっとしていても足が冷たく痛くなる⇒4.足に出来た傷が治らない、黒く変色して拡大する、という順に進行しますが、糖尿病患者さんや透析患者さんの中にはいきなり4.で発症する方もいます。3.4.を重症下肢虚血(CLI:critical limb ischemia)あるいは包括的高度慢性下肢虚血(CLTI:chronic limb-threatening ischemia)とよび、治療しなければ1年で20%以上が命を落とす非常に危険な状態です(図2)。

図2
図2:Eur J Vasc Endovasc Surg Vol 33,
Supplement 1, 2007より改変

下肢閉塞性動脈硬化症を診断するための検査で最も簡便なものは血圧脈波検査です。その検査で測定されるABI(ankle-brachial (pressure) index)が0.9以下、または1.40以上は異常値のため、下肢動脈エコーやCT、MRIなどの詳しい検査が勧められます。上記の症状を有する方、糖尿病や高血圧など動脈硬化リスクを有する方はABI測定を一度されることをお勧めします。

治療には薬や運動療法などの非侵襲的治療、カテーテル治療や手術などの侵襲的治療があります。当院で下肢閉塞性動脈硬化症と診断された場合、まずは非侵襲的治療とリスク因子の管理、合併症の評価を行いますが、状態が急ぐ場合は侵襲的治療を先にお勧めする事があります。当院で行う侵襲的治療はカテーテル治療が中心となります。足の付け根の動脈からカテーテルを挿入して治療を行うことが多いですが、手首や足の末梢から行うこともあります。予定治療の場合は3泊4日で行っておりますが、病状によって変更することがあります(図3)。

傷を伴う重症下肢虚血の患者さんはカテーテル治療だけで治療が完了することは出来ず、傷の処置や手術、その後のリハビリなど様々な治療を組み合わせて行くことが重要です。我々の施設では循環器内科医だけでなく、形成外科医、糖尿病内科医、看護師、リハビリテーション科、栄養士など多職種が協力し重症下肢虚血患者さんに対応しています。

症例紹介

図3
(図3)浅大腿動脈閉塞に対してバルン拡張およびステント留置で治療した症例

症例患者様:70歳代 男性
症例治療内容:重症の間欠性跛行症状があり、ワイヤー通過後バルーンにて拡張。
症例入院期間・回数:3泊4日、1回
※ 各循環器手術について(補足説明)

透析シャントに対する血管内治療

血液透析をする上で必要な透析シャントが狭窄、閉塞を来すと、必要な透析が受けられなくなり、命の危険に直結するため早期の対応が必要です。当院では近隣の透析クリニックから紹介いただいた患者様に対しては日帰りでシャント治療(PTA)を行っています。

深部静脈血栓症

下肢の静脈うっ滞、血液凝固能亢進、静脈壁障害などが重なることによって下肢の静脈内に血栓を生じる疾患を言います。近年では癌患者さんの治療中や、手術前後に合併することで当科を受診される患者さんが増えております。この疾患の一部は下肢の血栓が遊離した結果、肺動脈に詰まって肺動脈血栓塞栓症(エコノミークラス症候群)を引き起こすことがありますので注意が必要です。多くの場合は抗凝固薬の内服で対応が可能ですが、大きな血栓がある場合や、肺動脈血栓塞栓症を合併している場合などでは下大静脈フィルター留置や血管内治療など侵襲的治療が必要なことがあります。日常では左右差のあるむくみで発見されることがあり、血液検査や下肢静脈エコー検査などが有用です。

心不全

 近年生活習慣の欧米化などに伴う虚血性心疾患の増加や、高齢化に伴う高血圧症や心臓弁膜症の増加により、心不全患者さんは増加しています。心不全患者は2020年には日本国内で120万人いると推測されていますが、人口が減少するにもかかわらず、2030年には130万人にも達するといわれています。日本における死亡原因は、心疾患は悪性新生物に次ぎ2番目に多くなっています。

心不全とは

 心不全とは「心臓が悪いために、息切れやむくみがおこり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気」と定義されています。

心不全の症状としては体重の増加、坂道・階段での息切れ、食欲不振、むくみ、夜間の呼吸困難や咳などがあり、それぞれ下記の原因があります。心不全の症状は風邪症状と間違われることも多いのです。

  • 心臓から送られる血液量が減少する→疲労感や全身倦怠感
  • 心臓と肺に水がたまる→息切れ、咳、夜間の呼吸困難
  • 腎臓への血流が減少し体に水がたまる→尿量低下、むくみ、体重増加
  • 消化管や肝臓に水がたまる→食欲低下
心不全のステージ分類

心不全にはステージAからDの4つのステージがあります。

ステージAは、高血圧や糖尿病、動脈硬化疾患などの心不全リスクを持つ患者さん。
ステージBは、左室肥大など器質的疾患を持つが、心不全兆候のない患者さん。
ステージCは、明らかな心不全兆候を認める患者さん。
ステージDは、年間2回以上の心不全入院を繰り返し、薬物療法・非薬物療法に
関わらず心不全症状が改善しない治療抵抗性の患者さん。

心不全は寛解、増悪を繰り返しながらステージが進展していきますが、このステージは基本的に一方通行で進行し後戻りができません。そのためステージの進展を抑制することが大切です。また心不全は、再入院を契機に悪化していきます(図)。

心不全のステージ、治療目標と病みの軌跡
<図 心不全のステージ、治療目標と病みの軌跡>
出典:日本循環器学会 2021年急性・慢性心不全治療ガイドラインフォーカスアップデート版

心不全を悪くする病気は?
  • 心筋梗塞・狭心症: 心臓を栄養する血管が細くなったり、詰まったりするとその部分の心臓の動きが低下します。
  • 弁膜症: 心臓の弁の働きが低下し、心臓に負担がかかります。弁の狭窄と閉鎖不全が代表的です。
  • 心筋症: 心筋の働きが悪くなるため、血液を送り出す力が弱くなります。
  • 高血圧症: 血圧が高いと心臓に負担がかかります。
  • 不整脈: 脈が速くなる頻脈、遅くなる徐脈共に心臓に負担がかかります。
心不全を悪化させないために

 日常生活の中で、塩分や水分のとりすぎ、お薬の飲み忘れ、身体の動かしすぎ、ストレスに気を付けて頂くことで心不全の悪化を防ぐことができます。
 心臓の負担を減らすために水分・塩分制限、お薬をきちんと内服すること、心不全の悪化の有無を評価するために毎日の体重、症状を記録することが大切です。患者さんご自身の協力が必要なのです。

 八尾市立病院循環器内科に入院された患者さんには、循環器内科医師による高度な治療だけでなく、看護師、薬剤師、理学療法士、管理栄養士、心不全療養指導士、メディカルソーシャルワーカー(MSW)がチームとなって再入院を予防するための指導を行っています。

心臓リハビリテーション

リードレスペースメーカ植え込みの概略図 心臓リハビリテーション(心リハ)とは、急性心筋梗塞、狭心症、心不全などの心臓病をお持ちの方の再発予防や社会復帰を目的として、運動療法、薬物療法、食事療法・栄養指導、禁煙などの生活習慣の改善・指導を行っていく総合的なプログラムです。入院中だけでなく退院後も継続して頂くことで良い効果が期待できます。医師、看護師、理学療法士、薬剤師、管理栄養士、メディカルソーシャルワーカー(MSW)からなる多職種スタッフがチーム(その中には心臓リハビリテーション指導士1名、日本循環器学会認定心不全療養指導士4名が在籍しています)となって協力し、患者さん個々の病状に合わせた心リハを行い、病気に対する正しい知識を身につけていただきます。
 八尾市立病院では2022年7月より心大血管リハビリテーション施設基準(I)を取得し、主に入院中の患者様に対する心リハを担当しています。

心リハの効果が得られる病気は?

 以下の循環器疾患が心臓リハビリテーションの適応疾患となっています。年齢制限はありませんが、医師の判断のもと行います。

  • 心不全
  • 急性心筋梗塞、狭心症
  • バイパス手術や弁膜症などの心臓手術後、大動脈疾患(腹部大動脈瘤)などの血管手術後
  • 不整脈やペースメーカー植え込み術後
  • 肺高血圧症
  • 閉塞性動脈硬化症など
心リハの効果とは?

 体力の回復だけが心リハの目的ではありません。運動には下に示しますような様々な効果のおかげで生活の質の改善、心疾患再発や再入院の予防、健康寿命の延長につながります。

  • 運動耐容能が改善し、日常生活が楽になる。
  • 血管内皮機能が改善し、血管が広がり手足が温かくなる。
  • 自律神経機能が改善し、不整脈が減り、血圧変動が減少する。
  • 抗炎症効果や抗酸化作用、骨格筋での糖・脂質代謝が改善し、動脈硬化の原因となる
    危険因子(糖尿病、高血圧症、脂質異常症、肥満)の改善、予防ができる。
  • 骨吸収抑制、骨形成が促進し骨折の予防になる。
  • 不安や抑うつ状態が改善し、気分が晴れる。
運動療法は、いつからどんなことをするのか?

 循環器内科に入院し、薬物治療やカテーテル手術を受けた患者さんは、当初ベッド上で安静の状態ですが、個々の全身状態に応じて早期に離床を開始していきます。この期間を急性期と呼びますが、不安定な時期ですので医師の管理のもと、慎重に安静度の拡大を行います。当院では急性期離床プログラムを作成しています。ベッド上座位、端坐位の時間を確保し、関節可動域訓練、次いで立位訓練を行うことでフレイル(要介護状態)への進行を予防しています。病棟内での歩行が可能となれば、リハビリ室で低強度の運動から開始します。
 個々の体力(運動耐容能)に応じた適正な運動強度を見極めるために心肺運動負荷試験(CPX)を行います。CPXで体力(安全に施行できる運動能力)測定を行い、その結果から個々に合った運動処方を作成し、ご自身で行って頂く運動について指導しています。
運動中は心電図モニタリング、血圧測定を行い安全に配慮しています。
入院中は、原則休日を除いて毎日(月曜日から金曜日)行います。

病棟でのリハビリの様子

病棟でのリハビリの様子

リハビリ室での有酸素運動

リハビリ室での有酸素運動

運動療法の内容は?

 患者様に適した運動の種類、強さ、継続時間を決定します。リハビリ室でのストレッチ、有酸素運動、レジスタンストレーニング(筋トレ)を行います。全体で約1時間のプログラムです。

  • 準備体操(椅子に座って行うストレッチ体操)
  • 有酸素運動(自転車エルゴメーター):最初は軽い歩行や自転車こぎから開始し、徐々に負荷(ペダルの重さ)を上げていきます。運動強度は個々の運動耐容能に応じて決定します。
  • 自重、チューブなどを使い、レジスタンストレーニングを行い、上下肢の筋力を鍛えます。いわゆる「筋トレ」です。
  • 整理体操を行って終了します。
心肺運動負荷試験(CPX)とは?

 入院中、外来通院中の患者様に心肺運動負荷試験(CPX)を行います。血圧、心電図、酸素飽和度、呼気ガスを測定しながら、自転車をこいでいただきます。
 CPXでは、最高酸素摂取量 (peak VO2)や嫌気性代謝閾値 (AT)などの指標を用います。
最高酸素摂取量は、これ以上運動ができない強度での酸素摂取量のことです。ATは有酸素運動から無酸素運動に切り替わるポイントでの酸素摂取量のことです。ATレベル以下では体内に乳酸が蓄積せずに運動できる強度のことであり、無理なく安全に運動できる目安となります。
厚生労働省のメッツ換算表を用いて、退院後の運動指導を行っています。

心肺運動負荷試験(CPX)

CPXでは下記に示します様々な評価を行うことができます。

  • 体力測定と安全に運動できる目安の測定(運動耐容能の評価)
  • 運動メニューの作成と日常生活指導
  • 狭心症の重症度の評価と治療方針決定
  • 息切れの鑑別
  • 慢性心不全の病態解明・重症度把握・治療方針決定
  • ペースメーカー至適モードの設定
  • 僧帽弁閉鎖不全症の治療効果予測
個別指導

心肺運動負荷試験(CPX)

  • 医師、看護師、理学療法士、管理栄養士、薬剤師、MSWから病気と危険因子に対する指導と予防、運動療法、食事療法、薬の服薬方法、禁煙指導、退院調整を行います。カンファレンスを行い、個々の患者さんに対する検討、情報共有を行っています。
  • パンフレット(ハートノート)を用いた指導を行っています。
    正しい知識を身に着けて頂き、動脈硬化性疾患、心不全の再発予防に努めましょう。



 このように八尾市立病院循環器内科では、多職種が連携・協力し、個々の患者さんが円滑に元の生活に戻って頂けるよう努めています。お困りのことがありましたら、いつでもお気軽にスタッフまでお声掛けください。

治療診断機器

  1. 血管撮影装置:高解像度、シネレス(院内networkで即時に映写可能)
  2. 心エコー装置:3次元立体画像描出可。
  3. RI装置:心筋負荷シンチ、肺血流シンチ
  4. CT装置:320分割マルチスライス CT(高速で精密な画像診断、冠動脈描出可能)
  5. MRI装置:3.0テスラー高解像度MRI(心臓の形態や、心機能診断に有用)

以上の医療機器を活用し、迅速で適切な診断・治療を 24時間提供できるよう、医員一同鋭意努力しております。

各循環器手術について  ※上記症例紹介に対する補足説明

各循環器手術では血管に処置を行うため、重篤な合併症の発生が懸念されます。これを防ぐためには熟練した専門医師による安全確実な手技が前提となりますが、術中・術後の全身管理もまた非常に重要です。
手術後の回復については術前の症状の重さや、罹病期間によって異なるため、術後の改善が限定的となる可能性があります。手術の詳細については主治医にお尋ねください。